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一つの知恵である。
ハウスメーカーの家に見切りをつける土地を買ってから四年間の「熟成期間」に、Oさんは住宅雑誌や関連書籍を読み漁り、住宅展示場に出かけてモデルハウスを見学し、ハウスメーカーのパンフレットを集めて検討した。
その結果わかったのは、自分が求めている家が既存の住宅、とくにハウスメーカーの中にはない、ということであった。
「建築家・Kさん抜きに私の家は語れない」。
一人暮らし用の適当な間取りが見つからなかった、というだけではない。
その家でどんな暮らしが営まれるのか、そのイメージがOさんには見えなかった。
暮らしに対するイメージを決定する要素である“快適性”“機能性”“美しさ”は、人によって感じ方、受け取り方が実にさまざまだ。
それを一律に規格品として押しつけてしまうのもおかしい。
しかも、メーカーが宣伝する“便利な規格品”がけっして安くはない。
「たとえば温水洗浄のできるトイレはたしかに便利で快適だと感じる人はいるかもしれないけれど、私にとっては掃除が面倒なだけの無用の長物。
それなのに標準仕様になってしまっているハウスメーカーの家が結構あるのです。
システムキッチンも同様。
何百万もするそういう設備ではないところにお金を使いたいと希望する人だって、けっして少なくないはずです。
それに、便利だ、簡単だ、と楽をすることを美徳のように考えて売り込むのは、私にはちょっと許せないんですね。
家事を楽にこなしたいとは思わないし、楽したうえに、太っちゃったからジムに行く、なんていうのはもう本末転倒としか思えない」Oさんは自分の主張をわかってくれて、イメージを実現してくれる建築家を見つけてつくってもらうしかない、という結論に達した。
ところがどこで、どうやって、そういう建築家を探したらいいのかわからない。
予算がかぎられている。
小さな家だ。
そのうえ要望は多い。
はたして引き受けてくれる建築家がいるだろうか。
Kさんには友人の紹介でめぐりあった。
なかなか建設に着手しようとしないOさんをじれったく思った友人たちは、早く建てるようにとせっついたそうだ。
マンションやアパートで暮らしていたときも、Oさんのところには大勢の友人たちがよく集まっていた。
きっと友人たちはOさんがつくる場所を楽しみにしていたにちがいない。
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